「もうダメ。もう辞めたい。どうやったら辞められるかな?」 「不祥事でもおこして首になるとか?アハハ~」 こんなこんなアホな会話今までに何回したことだろう。
保険会社は入るのは簡単だが、(それなりの基準はありますよ。一応。)辞めるのがまぁ大変。 【営業所の所属人数を減らさないこと。】 【毎月1名は採用し、前年度よりも組織を大きくすること。】 保険契約と並ぶ一大スローガン。
毎月何人採用したかを随時報告しなければならず、1人も新人が入って来ない営業所の所長は、肩身が狭い。新人が入ってこない上に、退職者が出れば、当然営業所の人数は減っていく。
そんな状態で、「辞めたいです。」なんて言えない。言い出せない。
とは言え、離職率の高い業界、私が入社してから沢山の人が辞めていった。
さあ、勇気を持って「退職したい。」と言ったは良いがその後が大変だ。
退職迄の道のり。 【第一関門。所属の班長。】 (班長は所属の班員の数が査定に影響する。) 以前退職した、Aちゃん。班長に退職したい旨を伝えたところ 「だめ!絶対だめだから!」 と一喝。ここまでは想定内。ここからは粘り勝負。それでも辞めたいと言い続けた。
「どうせ辞めるんでしょ。もういいよ。」 「入ってくれたお客さんに悪いよ。もう少し続けなさいよ。」 「もう良いよ。辞めるんでしょ!!」 「コールセンタ-に問い合わせがあった案件があるから連絡して。(普通辞める人に新規の案件はふらないのだ。つなぎ止める為のツールに使っている)」 「続けたくてもノルマ未達で首になる人も居るのに、なんで頑張らないの?」
この類いの台詞を日替わりで言われ続ける。もっとしんどいのが毎週ある締め切り。もう辞めるのに新規の保険募集なんか出来るわけが無い。(ネット販売ではないので、入ってくれたお客様は自分が担当となりその後のアフターフォローも自分でやる。辞めると分かっていて契約を取るのは気が引けるもの。)
締め切り用紙を、班長に持って行く。 「どうすうんのよ?数字。ゼロだよ。」 「・・・・」←(【だから辞めたいって言ってんだよ!!】と心の叫び)
【契約取れず詰められる。】→【退職を申し出る。】→【退職受理されず。】→【契約取れず詰められる】魔のスパイラルが待っている。
退職の意思を伝えるも、何時まで経っても退職手続きの書類は本社から届かない。 事務員さんが、 「本社から書類届いてないんだから今月はやめれないわよ~」 と言っているのを何回も聞いた。
【第二関門は所長】 営業所の人数を減らすと所長の責任になる為全力で止めにかかる。そもそも退職の申し出が有る事をギリギリまで上に報告しない(らしい)。先ほどの退職書類がいつまで経っても届かないのは、所長で話が止まっているからのようだ。(保険会社は、ばっくれる事は出来ない。他の会社もしちゃいけないだどうけど、保険営業は免許事業だ。免許を取り消しの手続き及び退職の手続きの書類が山の様にあるのだ。そしてそれは本社から取り寄せなければならない。)
その後、ようやっと所長から上に話がいくも、所長のさらに上司が説得くるなどして話はなかな進まない。
結局Aちゃんが退職出来るまで6ヶ月かかった。
コロナ禍に入社した、Bさん。大学卒業したばかりのピチピチの女の子。二ヶ月の研修を経て、現場に来た。朝礼で一人ずつ行う、活動報告も初初しかった。 しばらくすると、ぽつぽつと休みが目立ち始め、ぽつぽつが連続のお休みとなった。 その後朝礼で所長から 「Bさんは今月をもちまして退職になりました。」 との報告あった。詳しいことを本人から聞いたわけではないが、 「もう無理です。」との事だそうだ。 現場に来て、およそ1ヶ月。ここ10年で最速の退職だった。
それでも、一応退職の段取りを踏んで辞めていくならまだいい。突然来なくなり、電話も繋がらない、家に行っても留守(居留守?)の人もいた。 もうここまで来たら辞めるなら辞めてくれても良いんだけど退職手続だけはして貰わなければならない。さてどうしよと班長、そうだ保育園のお迎えは必ず行くはずと思い、お迎えの時間に合わせて家の前を張り込んでやっと捕まえたらしい。
そうかと思えば
「もう辞めたい。」「もう辞めるぅ~」 と5年も10年も居る人もいる。 それなりにこの仕事を続けて居る人は、この仕事の自由さもよ~く分かっている。1日のほとんど営業所。ゆっくりランチ。電話でアポが取れたら何件か訪問する。 「今日は病院の定期検診なの。」 「今日は接骨院にいくの。」 家に帰ってちょっとゆっくりしたりも出来る。それでも、給料は発生する。
辞めたくないんだろうけど、イヤなことがあったり思うように数字でなかったり、所長と折り合いが悪かったりすると、「もう辞めるから!!」 と言い出す。 「そんなこと言わないで下さいよ~」 お決まりの返しを期待しているだろう【もう辞める】これはこれでなかなか鬱陶しいもの。
因みに、Aさんが退職の時に、「絶対ダメ!!」と止めに入った班長も、何度も辞めたいアピールをする人だ。最近も、なにか気に入らないことがあったのか 「来月で辞めるから。」 と言っていたが、次の月 「やっぱり辞めるの辞めた。」 と今も元気に働いている。そうゆう私も不祥事を起こすことなく、愚痴を言いながら続けている一人である。
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