「俺も昔はやっていたんだよ~」

4月に、所長が替わった。

若くて、なんか高そうなスーツ着てビシッとしてて【僕負けず嫌いなんでそこんとこよろしく👍】的な、悪く言えば鼻につく感じだった。

事務仕事は早い。ちょっと無理そうな案件とかも、上と掛け合ってごりごり通してくれたりするんだけど。ただ 全く外に出ない。ひたすらにパソコンかデンタクかどちらかとにらめっこ。営業所に居て、ひたすら私たちに、もっともっとと葉っぱをかける。

でもってデンタクをたたく早さが尋常では無い。一度嫌みで、

「デンタクたたくの早いですねって言ったから」

そういう仕事だからと帰ってきた。お前はAIか? イラッとした。そして心の中で【デンタク君】というあだ名を彼につけた。

自分ごとだけなら、デンタク&パソコンにらめっこ所長でも良いのだ。

しか~し。わたし一応班長?!みたいな。でね、言ってみた。

「たまには、皆と一緒に地区回ってください。」

「いや~男の俺が行くと怪しいじゃん。」

男のあなたがやって怪しいことは、女の私がやっても大体は怪しい事なのよ。

「じゃあ、班員さんの山田さんの、企業訪問に同行してあげて下さい。なかなか契約取れて無いんで。」

「いやさ、基本自分でやらないと。最低でもアポが取れてないと同行は無理だよ。いやね。俺も昔はやってたんよ。だけどさ、そうすると俺が移動した後、その人達困るじゃん。だからもう一緒にやるの辞めたんだよ。」

目の前のデンタク、粉々に割ってやろうかと思ったわ。

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